燃料用アルコールの電車内持ち込み

バックパックキャンプ
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 2019年頃に、ある乗客がライター用オイル缶を東海道新幹線に持ち込んだところ危険品であるとして増運賃等約6万円を請求されたという「事件」があったようです。検索していただければ、その「事件」を取り扱った記事が見つかりますので、詳細はそちらでご確認ください。

 ここで考えたいことは、ライター用オイルが危険品として車内持ち込み禁止なのであれば、アルコールバーナーに使われる燃料用アルコールも同様に車内持ち込み禁止なのではないか、ということです。

 これは、電車でバックパックキャンプに行く私にとっても非常に関心があります。

 以下、JR東海を例に考えたいと思います。なお、内容はすべて、2020年7月5日時点のものになりますので、その点はご注意ください。

JR東海の旅客営業規則の定め

 JR東海の旅客営業規則は、JR東海のホームページにおいて、以下のとおり辿っていけば確認できます。

JR東海トップ ▶︎ 鉄道のご利用について ▶︎ きっぷのルール ▶︎ ページ上部「JR東海の運送約款はこちらからご覧いただけます。」(運送約款) ▶︎ 旅客営業規則

 まず、「危険品」はJR東海の車内に持ち込むことが禁止されています(JR東海 旅客営業規則 第307条第1項(1))
)。

 では、何が「危険品」なのかというと、それはJR東海の旅客営業規則別表第4号に記載されています。そこには、メタノール、アルコールなどの「可燃性液体」が危険品の品目として掲げられています。
 ただし、除外規定があり、それは以下のように定められています。

「日常の用途に使用する小売店等で通常購入可能な可燃性液体を含む製品(揮発油等の可燃性液体そのものは除く。)で、2リットル以内のもの又は容器・荷造ともの重量が2キログラム以内のものは、手回り品として車内に持ち込むことができる。ただし、中身が漏れることを防ぐための適当な方法で保護してあるものに限る。」

(出典:JR東海 旅客営業規則 別表第4号 危険品。2020年7月5日現在。)

 昔の除外規定は、メタノール、アルコールに関していえば、3kg以内のものは持ち込み可能という簡素なものだったようです。ところが、2015年に東海道新幹線車内放火事件が起きたことから、JR各社は2016年4月に規則を改定したという経緯のようです。

JR東海のホームページ上の記載

 また、JR東海のホームページにも記載(以下「HP記載」といいます。)があります。場所は以下のとおりです。

JR東海トップ ▶︎ 鉄道のご利用について ▶︎ きっぷのルール ▶︎ 手回り品

 内容は以下のとおりです。

(危険品について)
・危険品とは、可燃性液体、高圧ガス、可燃性固体、火薬類、揮散性毒物、農薬などを指します。
・一部の危険品については、梱包方法や持ち込み数量などを制限した上で、車内にお持ち込みいただけるものもありますが、ガソリン、灯油、軽油などの可燃性液体そのものは、量に係わらず、車内への持ち込みはできません。
・可燃性液体、高圧ガス、可燃性固体を含む製品であって、小売店などで一般的に購入いただけるもの(酒類・化粧品類・医薬品・ヘアスプレーなど)は、2リットル以内または容器を含む重さが2キロ以内であれば、持ち込むことができます。この場合、中身が簡単に漏れ出ないようにご注意ください。

(出典:JR東海 きっぷのルール 手回り品 危険品について。2020年7月5日現在。)

JR東海のPDFにおける記載

 他にも、JR東海のホームページには、「車内に持ち込めない危険物のご案内」というPDF(以下、単に「PDF」といいます。)もあります。なお、PDFは、以下から確認できます。

JR東海トップ ▶︎ 鉄道のご利用について ▶︎ きっぷのルール ▶︎ 手回り品 ▶︎ ページ下部「車内に持ち込めない危険物のご案内」

 そのPDFを見ると「持ち込みは可能ですが、重さ・量に制限がある危険物の代表例」として「日用品として小売店等で購入できる可燃性液体や高圧ガスを含む製品」という項目があり「酒類、化粧品類、医薬品、ライター、ペンキ、カセットボンベ用カセットガスなど」と記載されています。

 なお、カセットボンベ用カセットガスは「高圧ガス」として「危険品」に該当しますが、「高圧ガス」にも「日常の用途に使用する小売店等で通常購入 可能な高圧ガスを含む製品で、2リットル以内 のもの又は容器・荷造ともの重量が2キログラ ム以内のもの。」という除外規定が旅客営業規則にあります。

考えてみる

 旅客営業規則別表第4号「危険品」の「可燃性液体」の項目の除外規定を分解してみると以下のようになります。

  1. 日常の用途に使用するものであること。
  2. 小売店等で通常購入可能なものであること。
  3. 可燃性液体を含む製品であること(揮発油等の可燃性液体そのものは除く。)。
  4. 2リットル以内のもの又は容器・荷造ともの重量が2キログラム以内のものであること。
  5. 中身が漏れることを防ぐための適当な方法で保護してあるものに限る。

 「可燃性液体」でも、これらのすべての条件を満たせば車内持ち込みが可能だということです。逆にいうと、どれか1つでも条件を満たさなければ、車内持ち込みは禁止ということです。

 以下、上記の除外規定の条件に沿って、ライター用オイルが車内持ち込み禁止とされた(除外されなかった)理由を少し考えてみたいと思います。なお、上記4、5の条件については、ライター用オイルであることとは無関係の条件なので、省略します。

ライター用オイルは「日常の用途に使用するもの」ではないからか

 「日常の用途に使用するもの」というのはPDFのいうところの「日用品」と同義と考えられますので、以下、「日用品」と記載します。なお、HP記載には「日用品」という条件に類する記載はありません。

 「日用品」かどうかの基準はどう考えるべきなのでしょうか。

 一般の人々が使用していれば「日用品」となるのでしょうか。確かにライター用オイルを使用している人は多くはないでしょうが、それほど特殊品とも思えません。

 引火しやすいと「日用品」ではなくなるのでしょうか。カセットボンベ用カセットガスも引火しやすいように思いますが、車内持ち込みが可能です。

 いずれにせよ「日用品」というだけでは、基準が明確であるとは言い難く、ライター用オイルが「日用品」ではないと言い切るのは若干無理があるような気がします。

ライター用オイルは「小売店等で通常購入可能なもの」ではないからか

 私は、ライター用オイルを購入したことはありませんが、普通にお店で売っているのではないでしょうか。

ライター用オイルは「可燃性液体を含む製品」ではないからか、あるいは、「可燃性液体そのもの」であるからか

 「可燃性液体を含む製品(揮発油等の可燃性液体そのものは除く。)」という旅客営業規則の記載からすると、「可燃性液体を含む製品」という概念は「可燃性液体そのもの」という概念を包含しているように読めます。つまり「可燃性液体を含む製品」の中には「可燃性液体そのもの」も含まれると思われます。このように考えると、ライター用オイルが「可燃性液体そのもの」がどうかが検討対象ということになります。

 では、「可燃性液体そのもの」かどうかの基準はなんなのでしょうか。これは明確なような気もしますが、明確ではないような気もします。ライター用オイルが「可燃性液体そのもの」であることはおそらく異論はないのでしょうが、アルコール度数の高い酒類、例えばウォッカは燃えますよね。すると、ウォッカは「可燃性液体そのもの」なのでしょうか。そこまではJR東海も考えていないと思います。

 若干疑問もありますが、ライター用オイルは「可燃性液体そのもの」であるから車内持ち込み禁止(除外されない)とするのが一番わかりやすいように思います。

 なお、カセットボンベ用カセットガスなどの「高圧ガス」の除外規定については、「高圧ガスを含む製品」とあるだけで、「高圧ガスそのものは除く」という条件はありません。

燃料用アルコールはどうなのか

 以上の考え方に従うと、燃料用アルコールも「可燃性液体」という「危険品」であり、「可燃性液体そのもの」であるから除外規定にも該当せず、車内持ち込み禁止という結論になりそうです。

 なお、上記はあくまで私の一考察に過ぎませんので、その点はご了承ください。

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